伐る時期16 / 30
木には二つの命がある
木には、山で育ってきた樹齢としての命と、伐られて建物の材として働く命の二つがある、という西岡常一棟梁の考え方。大工の務めは、その両方の命を全うさせることにあるとする。
理由
法隆寺の宮大工・西岡常一は、木の命を、山で生きてきた年数と、材として使われてからの年数の二つに分けて語った。両方の命を全うさせるのが大工の務めであり、そうしなければ木に申し訳が立たないという考え方で、『木のいのち木のこころ』に記されている。
伐った後も木が変わり続けることは、木材の分野でも確かめられている。木は伐った後も周りの空気と水分をやり取りし、その土地の湿度に釣り合う含水率に落ち着く。歴史的建造物から取り出したヒノキの古材を調べると、同じ湿度でも古材は新材より水分を含みにくくなっていた。古材の強さも、1950年代から法隆寺の古材などで調べられてきた。
ただし「命」は西岡の言葉としての比喩であり、材としての寿命が樹齢と同じ長さになるといった対応には、科学的な検証は確認できていない。伐った後も材は変わり続けるものとして扱う、という点で理にかなう。
現場では
- 伐った後も材は周りの湿度に合わせて水分を出し入れし、寸法が動く。周りの湿度と釣り合う含水率(平衡含水率)まで乾いた材は、その後の伸び縮みが抑えられる。
- 古材を使い直すときは、新材と同じ性質と決めつけず、水分の吸い方や強さが変わっている前提で扱う。