木を使う15 / 30
柱は元を下に、末を上にして立てる
柱は、木が山に立っていたときと同じ天地で使う。根に近い側(元口)を下に、梢に近い側(末口)を上にする。上下を逆にした柱は「逆柱」と呼ばれ、昔から嫌われてきた。
理由
逆柱は、夜中に家鳴りを起こす、家運を傾ける、火事などの災いを呼ぶと言われ、忌み嫌われてきた。日光東照宮の陽明門には、彫刻の模様が逆向きの柱が一本だけあり、「建物は完成と同時に崩れ始める」という考えから、わざと未完成にして災いを避ける魔除けとされている。言い伝えの中心は、強さの話ではなく縁起の話である。
「元口のほうが末口より強いので下にする」とも言われる。ただ、スギの幹の中の材質を調べると、無欠点の小試験体の曲げヤング係数・曲げ強度・縦圧縮強度は、地上高が高いほどやや高くなる傾向で、根元に近い1番玉の丸太のヤング係数は2番玉以上より低かった。5本のスギを調べた範囲では、根元側ほど強いとは言えない。
1本の柱を上下逆に立てると弱くなるかは実際に比べられておらず、科学的な検証は確認できていない。元を下にするのは、木を育ったときの姿のまま使うという作法として受け継がれているものである。
現場では
- 刻む前に元口と末口を確かめ、天地がわかるよう墨で印を付けておく。
- 「元口は強いから下」と施主に説明しない。強さの根拠ではなく、木を育った姿のまま使う作法として伝える。