吉野工務店
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木を選ぶ5 / 30

堂や塔の木は、木でなく山ごと買う

堂や塔に使う材は、伐り出された木を一本ずつ買うのではなく、木が育っている山ごと手に入れる。山で育った場所と環境を自分の目で確かめてから、どの木をどこに使うかを決めるという考え方。

理由

伐られて材木になった木からは、どこでどう育ったかがわからなくなる。山ごと買えば、その木が育った場所と環境を見たうえで、使い道を割り振ることができる。これが口伝の趣旨である。一つの山の木で一つの堂や塔を建て、産地の違う木を混ぜないという意味にも解される。

育った環境が木の体に残ることは、林業の分野でも知られている。強い風や急な斜面に立つ木は、倒れないように力の掛かる側を太らせ、年輪の幅が偏る。これを「あて」と呼び、斜面では針葉樹は谷側、広葉樹は山側に偏る。針葉樹は、傾こうとする幹の下側(谷側)に「圧縮あて材」を作り、幹の重みを下から押し上げるように支える。広葉樹は反対に、上側(山側)に「引張あて材」を作り、幹を上から引っ張り上げるように支える。支え方が逆なので、太る側も逆になる。育った条件がわかれば、材の癖を前もって読みやすくなる。

ただし、山ごと買うことで建物が長持ちすることは直接確かめられていない。理にかなうのは「育った条件を知ったうえで木を選ぶ」という部分である。

現場では

  • 材を選ぶときは、できるだけ産地と、山のどの場所で育ったか(斜面の向き・谷側か尾根側か)を確かめる。
  • 育った条件がわからない材は、木口の年輪の偏りを見て、あての側を読んでから使い道を決める。
  • 口伝にならうなら、一つの建物の主要な材は、産地を混ぜずに同じ山の木でそろえる。